杉本博司さんが小田原に20年かけて構想したという江の浦測候所に行ってきました。本人が土地を購入されたということで、敷地全体が作品となっています。
平面構成としては春夏秋冬の日の出の方向にそれぞれ軸をもち、季節になると崖を貫くように挿入された各ボリュームに光が差し込む仕組みです。「天空を測候する場所」ということで、これが「測候所」という名前の由来の様です。
敷地に入ると、100mのギャラリーが建っています。37枚も並ぶガラス面には柱がなく、屋根は反対側の壁からの片持ちとなっています。さらに先の方は地面から突き出していて、その下を歩くことができます。ここは夏至の日の出が拝める様です。
コールテンが地中に埋まっているこちらのトンネルは、冬至の日の出の軸を取っています。ここがこの施設のメインの様です。
冬至は一年の終点でありまた起点である。この特別な一日は、巡り来る死と再生の節目として世界各地の古代文明で祀られてきた。日が昇り季節が巡り来ることを意識化し得たことが、人類が意識を持ち得たきっかけとなった。この「人の最も古い記憶」を現代人の脳裏に蘇らせる為に、当施設は建設された。
江の浦測候所パンフレット
ここの建築は、日本の各時代の建築様式および工法を取り入れ、それらを保存する役割も果たしています。敷地内には建物だけではなく化石や文化財も置いてあり、平安末期に橘俊綱によって書かれた「作庭記」の再検証を試みているそう。みかん畑や竹林が広がるエリアがそれに当たるのでしょうか、範囲がとても広くかなり歩いたのですが、所々にオブジェクトが布置されていて飽きることなく楽しめました。
日の出の時間には行きませんでしたが、すっきりとした秋晴れにパキッとした建築がとても素敵でした。