メモの魔力 前田裕二

たかがメモ、されどメモ…

我々が日常的に書いているメモは、ほとんどの場合次の日には捨ててしまうものだろう。しかし、世の中(美術館など)には、レストランのナプキンに書いた簡素なスケッチが額に入れられて「貴重な資料」として展示されていることがある。

ということは、我々のメモにもそのような可能性が潜んでいて、我々がメモの能力を生かしきれていないということではなかろうか?

そんなメモのポテンシャルを引き出してくれるのが本著である。

ファクト→抽象化→転用

 多くの人はファクトのみメモして、後のふたつを行わないことが多い気がする。そうすると、ただ事実を書いただけのノートになり、後になって見返しても自分がなぜこのメモを書いたのか思い出せず、最終的には見返すことすらしなくなる。

また、人は頭で論理的に考えているつもりでも、途中の過程が流れてしまったり、直感的に間を飛ばして結論にたどり着く場合がある。よって、メモという行為において大事なのは、「忘れないように書いておく」のではなく、「自分の思考過程が流れないように紙に留めておく」ことである。

本書では、抽象化→転用の段階を踏むように書かれているが、実際にやってみるとなかなか転用まで進めないことが多いので、慣れるまではどちらかだけでもいいかもしれないと思った。試しに、本文に出てきた「大阪人は東京人よりも目に見えるものの訴求に弱い」ということに対して私なりの解釈を添えてみる。

「大阪人は東京人よりも目に見えるものの訴求に弱い」

→・建築においては、形態的な面白さ(曲面など)によるデザインを受け入れてもらいやすいかもしれない

 ・企業のブランディングにおいても、東京と大阪でやり方を変える必要があるのではないか

メモ内容の分類

本書では、4色ペンで内容を分けることが推奨されている。

  • 主観:緑
  • ファクト:黒
  • やや重要:青
  • 重要:赤

※重要と緊急を混同しないこと

この「重要と緊急を混同しない」というのが大事で、これはただのToDoリストにも言えることだろう。緊急の仕事や家事などに追われすぎて、自分が重要と考える趣味や家族の時間などが犠牲になっていては元も子もない。また、この色分けは「綺麗に見せる」ためではなく「内容の分類がパッとみてわかる」ことなので、色を増やしすぎてもいけないし、色分けすることが書くことの障害になってもいけない。

抽象化

要は、ファクトの状態の情報を、いつか使えそうなアイディアになるまで自分の中で噛み砕けということである。

私の場合、アイディアを直感的に思いつくことが多く、思考の途中が飛んでしまうため、人に説明する際にその辺を理解してもらえないことが多い。その場合は、「どうしてこの結論になったんだろう」と、逆方向の抽象化を行えば、間を埋めることができるかもしれない。

レトリックとタイトル

メモの内容を一言で表すタイトルをつけることは、人にその話題をふる際に興味を持たせるのに効果的である。また、レトリックのうまさは、会話の時だけでなくプレゼンや作詞でも人を惹きつける。

訓練の方法は簡単で、抽象化の後にその概念を端的に表す言葉を考えること、日頃から気に入った言葉をストックしておくことである。

我見と離見

元は能の考え方で、自分から離れたところ(観客席)から時自分の姿を見ることである。私は不思議と小さい頃から自然とやっていたことなのだが、自分に余裕がなくなると我見でしか見れなくなる。それは即ち視野が狭くなっているということだろう。

自分の軸

本書の巻末には、自己分析のための質問が1000個も書いてある。就活生にはまさにどストライクな付録だろうし、「私はこんな仕事をしていていいのだろうか?」と誰しも迷うことがあると思う(あるらしい)ので、ぜひ活用してほしい。私も少しずつトライしていこうと思う。

「自分の軸を持っている人」としては、下町ロケットの主人公佃がいい例だろう。(先日読んだばかりなのでより印象が強い。)佃は、周囲から様々な選択肢が与えられるが、自分の軸を適切に見定め、反対意見に心を痛めながらもブレずに進み続ける。最終的には反対していた部下も社長について行くと決め、佃の夢を後押しした。

自分もこだわりを貫いて仕事がしたい、そんな仕事ができるような軸を見出したいと思う作品である。

終わりに

ズボラな私は、ひとまずメモスタイルは変えず、iPhoneのメモを多用しておこうと思う。

しかし、デジタルツールから離れる時間が必要だと普段からよく感じているので、腰を据えて手書きで考える時間も増やしていきたい。

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