ポリリズム的建築

修士設計

アルド・ファン・アイクの孤児院の分析を基に、音楽的概念である「ポリリズム」を建築に置き換える。

アルド・ファン・アイクの音楽的分析

音楽と建築は古来から深く関係してきた。
中でも、アルド・ファン・アイクの孤児院はバッハの影響を強く受け、対位法の概念により建築が構成されている。
この建築に於いてさらに興味深いのは、グリッドで構成された全体に対する、「ずれ」の効果である。

対位法とは
音楽:それぞれ独立した旋律を担う声部を、いくつか同時に組み合わせて楽曲を構成する作曲技法。
建築:二つの全く対照的な様式・発想などを組み合わせて構成する技法。

Orphanage における対位法

○並置と雁行
 Orphanage はグリッドの並置からなる建築だが、室配置の妙により雁行した
 動線が現れる。

○内部と外部
 内部にレンガなど外部的な素材を用いることで、外部の様な内部( 都市の様な建築)を実現している。

「ずれ」の要素
 グリッドから外れた要素が空間の質を高めている。
 特に、45 度ずれたガラス面が各所に見受けられる。

敷地:国営ひたち海浜公園

茨城県ひたちなか市にある国営ひたち海浜公園は、近年ネモフィラやコキア、ロックフェスなど季節のイベントで人気の観光スポットである。しかし、オフシーズンには集客要素がなく、恒常的な観光産業にはあと一歩及ばない。

砂丘エリア
海浜公園内に、「砂丘エリア」があるのをご存知だろうか。太平洋の絶景が望めるなど様々な見所があるエリアだが、訪れる人は少ない。
原因としては、人気スポットから遠いことや道が複雑で迷ってしまう、エリア内のスポットが散在していて印象が薄い、等が考えられる。

残して活用する既存建築物
サイレントギャラリーはアートギャラリーとして、ロックガーデンはそのまま活かして設計する。
その他の施設については、機能はそのままに配置や建築を新たに計画する。

対位法的操作

〇二つのグリッド(3m/2.5m)
大きさの異なる二つのグリッドを重ね合わせると、それぞれのリズムのずれによりモアレのようなパターンができる。

これは音楽におけるポリリズムの概念に通ずる。
《ポリリズム》
同じ時間軸において異なるリズムや拍子がある音楽。
(「ポリ」は「複数の」という意味)

〇二つの軸
二つのグリッドの角度を変える操作にもポリリズムが応用できる。
アイクの孤児院には、45 度ずれた要素が見られるが、これを拡張して二つの軸とすることで、「ずれ」であったものがアルゴリズムの一部となる。

〇二つの素材( 木 ↔ コールテン:自然 ↔ 人工)
内部には木( 自然)、外部にはコールテン鋼( 人工) という対照的な素材を用いた。
グリッドの干渉により内部に外部的素材が現れるなど、印象的な空間を演出する。

〇グリッドと円
アイクは内部と外部の境界をやわらげるための手法として、素材の他に円を用いた。
これを引用して、グリッドが衝突する箇所や動線の緩衝地点に円を置いた。

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