日日是好日 森下典子

筆者が茶道を極めていく過程で気づいた色々なことを、豊かな描写で語ってくれる本。

茶道は、お茶のたて方を身につけるだけではないということは何となくわかっていたが、伝統的な和の感覚や自然と一体となる感覚を学ぶものと想像していた。本書を読んでみて、私の想像は間違ってはいないが、それは茶道のほんの表層であると感じた。

「今に気持ちを集中する」という教えが本書では何回か出てくるが、これは最近流行りのマインドフルネスと同じ考え方である。日常生活において、何かしていてもつい過去の出来事や自分のこれからのことばかり考えてしまいがちだが、それよりも今この瞬間を大切にするべきとのこと。昔の武士などは特に、いつ自分の首が飛ぶか分からない生活であったがゆえに、この考え方が大事だったのだろうと思った。

一番重要なのは、日々の稽古を通して自分なりに気づき学んでいくことであり、よって得るものは人それぞれである。それはその人の人生において大切な価値観となる。この奥深さが、茶道が古くから親しまれてきた所以なのだろう。

文中のお茶菓子の描写があまりに美味しそうで、私も和菓子が食べたくなってしまった。

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