街中で「なんか良い感じ」なデザインを見かけると、その多くがnendoのデザインだったりする。(NewsPicksの期間限定配信だったと思うので共有できないが、)この動画では、それらの裏にある佐藤オオキのフィロソフィーを垣間見ることができた。
まず、「デザインとは何か」という正解のない・答えるのが難しい問いに対して、とてもシンプルでかつ分かりやすいダイアグラムでの回答が鮮やかだった。紙とペンのみで、サラサラと図を描きながら、簡単そうに説明してしまうので、こちらも「なんだ、それだけのことか」と思ってしまうほどである。いわゆる「かっこいいもの」をつくる人もデザイナーの一つの型ではあるが、佐藤さんはそうではなくて、物事の本質をとらえ、絡まったものを解いてよりシンプルな姿にしていくデザイナーなのだろう。
企業の本質を捉え、クライアントから真に要求されていること(多くの場合クライアント自身がそのことに気づいていないという)を見抜くことで、ブランドそのものを「デザイン」していく。これはロゴデザイナーの佐藤可士和さんも同様のことをおっしゃっていた記憶がある。たまたま成果物が目に見えるデザインであるだけで、目指しているのは噛み合っていない点同士をなんらかの方法で繋ぐこと、そのため必ずしも答えは依頼されたものとは限らないということがとても納得できた。nendoの作品は結果的にとてもシンプルなものが多いが、そこに至るまでには紆余曲折、計り知れない労力が注ぎ込まれているのだろうと思った。彼らが「天才」と呼ばれるのは、物事の本質を捉える力がずば抜けているからであろうが、たとえ問題点を見つけられても、その解決策を形にできるとは限らない。むしろそこがクリエイターにとって一番楽しいところでもあり、苦しいところでもあると思う。数多くの案件に対して、高水準のアウトプットを出し続けられる彼らは本当にすごいデザイナーである。